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  • 執筆者の写真ダンモOB会事務局

Miles Davis: Birth of the Cool’ Review

星野正治さんからのNY便り


Jazz愛好の皆様へ

お待ちかね(?)のマイルス・デイビスの伝記映画Miles Davis: Birth of the Cool (監督スタンリー・ネルソンStanley Nelson)が公開され、筆者自身も昨日9/1にマンハッタンでの上映を見てきました。


上映の後に評論家Ashley Kahn氏を交えての座談もあるためか、勤労感謝ウィークの最中にも拘らず入場券は売切れで客席は満杯でした。

映画はマンハッタンのソーホー地域にある映画館Film Forumにて8月23日(金曜)から9月5日(木曜)までの2週間上映(1日5回)しているので、ニューヨーク地域にお住まいの方はあと3日間まだ間に合います。

以下のサイトにアクセスすれば上映予定時間と切符の購入ができる筈です。:https://filmforum.org/film/miles-davis-birth-of-the-cool#trailer

座談でも観客からDVDの発売について質問がありましたが、Mr. Kahnの説明ではまだ発売は未定との由でした。ジャズファンが多い日本では日本でのDVD発売が近々あると予想されます。 映画の予告編は以下のYouTubeで見ることができます。


この映画評がニューヨーク(NY)タイムズにありました。以下のサイトにアクセスすれば読むことができます。


映画は題名だけから推測すると名盤Birth of the Coolの誕生秘話かと思いきや、そうではなくマイルスという傑出したアーティストの伝記として構成されています。まずはまだティーンエイジャーの頃に既にセントルイスのジャズシーンに登場している所から始まり、バップ、自らが主導したクール、ハードパップ、ギルエバンスとの共作、ロック、パンク、フージョン、との変遷を経て、最後は晩年のモントルー・ジャズフェスティバルでのクィンシー・ジョーンズ指揮のかっての名演奏再現までが紹介されています。

NYタイムズ映画評に紹介されていますが、マイルス本人の独白を俳優のカール・ルンブリーCarl Lumblyと云う人がしているのですが、このしわがれ声が本人に実に良く似ていてそっくりの感じです。映画は写真、フィルム、ビデオ、独白、共演のミュージシャンや関係者のインタビュー証言、を巧みに織り交ぜて進行するのですが、1時間55分の上映を全く飽きることなく見終わることができました。

関係者の中で目立たったのは、一時期妻となったプロ・ダンサーのフランシス・テイラー(Someday My Price Will Comeと E.S.P.のLPジャケット写真の女性)の証言でした。マイルスから紹介されたクィンシー・ジョーンズがハンサムだとマイルスに伝えたら、マイルスに殴られ床に倒されたと云うのです。

マイルスは嫉妬心と猜疑心が強く、彼女をダンサーの仕事から辞めさせてしまい、結局は彼女はマイルスの元から去らざるを得なくなり、その後マイルスは相当に落ち込んだとの由です。彼女は自分の脚元legsと美貌に余程自信があったせいか、何回か脚元について、また自分がモテたことを喋っています。愛すべき人と思いました。 本人のインタビューはなかったのですが、映画での説明ではマイルスが長期間不活動だった後の復帰には女優のシセリー・タイソンが大きく貢献したとのことです。

NYタイムズ映画評に指摘があるように、マイルスがCBSに移籍した後に殆どのアルバムをプロデゥースしたテオ・マセロ氏のインタビューはなく、言及されることもなかったのは不思議ではありました。氏は既に他界しているのですが、インタビューは無理としても氏とマイルスの共同作業については説明があるべきだったと思います。

また映画評で触れられているように、映画の中のインタビューで、アーチー・シェップがマイルスに演奏にシットイン飛入りしたいと丁重に申し出たのに対し、マイルスがにべもなかった、と語っていますが、マイルスの自己中心、唯我独尊を示すエピソードのひとつですね。

映画に挿入されたビデオやフィルム断片ですが、フュージョン以前のマイルスの演奏については既に見ているものが殆どでした。音楽とは関係ないですが、マイルスが大好きだった動くボクシングの練習風景のフィルムは初めて見ました。

マイルスはその音楽の美しさとは矛盾した強烈な猜疑心とエゴの人であった(それ故に音楽の美しさが発生)ものの、その一生を常に新規なことに挑戦し続けた類い稀なるアーティストであった、と云うのが映画全体のメッセージであり、正にその通りと実感しました。再度になりますが、マイルスについての伝記映画としては時系列的に良くまとまられた映画であり、ジャズ愛好家にとっては必見の映画だと云えます。

星野正治 =============================================================

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